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2006年9月18日 (月)

手作りで何をつくるのか、、、

■1989年5月25日に農山漁村文化協会(農文協、月刊誌『現代農業』の発刊で有名)から哲学者の内山節(たかし)『自然・労働・協同社会の理論~新しい関係論をめざして~』が出版された。僕は出版された日にこの本を書店で購入し、5月31日に読み終えた。29歳の時だ。内山節氏は1950年生まれ、高校卒業の哲学者で昭和村にも2度ほど来ている。群馬県上野村と世田谷を行き来して釣り・農業、、現在では立教大で教えている。

 150ページに、

 ~使用価値は、自然から労働へ、労働から消費へという3つの流れを経ることによって本当の使用価値になるのであって、労働者だけが勝手に使用価値をつくることはできないのです。~~~

 これを農業者、生産者に置き換えて考えてみる。

 さらに続けて、

 ~~のどが乾いたので、ともかく水でも何でもいいからのどが湿ればいいという使われ方をすれば、それがそのお茶の使用価値になるかもしれない。また、お茶が消費者の手で文化的な使われ方をすれば、それがまたお茶の使用価値になっていくのです。

 たとえば、日本では茶道という独特なお茶の作法がありますが、茶道を通してお茶をたてることによって、ただのお茶がお茶の文化を形成してしまう。そこまでくると、お茶には単にのどを湿らせるということをこえた日本のひとつの伝統文化を形成する、そういうものとしての使用価値がつくられていることになります。

 ですから、つくり手の側も、茶道に使われるお茶はそういう使われ方をするということを前提にして労働をする。当然、つくる側の労働も変わってくる。つまり、お茶が最終的にどのように使われるかによって労働も変わるのです。

 ですから、使用価値を回復すると言うとき、使用価値は単につくり手だけではつくれないということを、きちっと押さえておかなければいけないと思います。つくり手が一方的に提供することはできないのです。

 使用価値は、自然から労働へ、労働から消費へという流れのなかでつくられる。ですから使用価値とは、使用価値実体それ自身が、関係性のなかでつくられているのです。この過程で消費者も変化していくだろうし、労働も変化していくだろう。そういう変化を包み込みながら、交通するなかで生まれる価値、それが本当の使用価値なのだろうと思うのです。~~~

■10年後の38歳、交通事故で入院中の1828号室(病棟)、1997年10月27日に読んだのは、1996年10月21日に岩波新書から発刊された見田宗介『現代社会の理論』の97年7月7日刊の6刷り。

149ページから、

 ~~マテリアル消費自体は、長期傾向的には増加していないということを示している。このことは現代の消費社会が、必ずしも資源の消費量を増大しつづけることなしに、持続しつづけることができるということを示しているように思われる。~

 消費社会が資源消費を減少しながら、持続することも可能であることを示している、、、

152ページ、、

~情報は、自己目的的に幸福の形態として、消費のシステムに、資源収奪的でなく、他社会収奪的でない仕方で、需要の無限空間を開く。あるいは市場のシステムを前提としない、人間の社会の理論のいっそう原的な水準でいえば、それは有限な物質界を生きる人間に、幸福の無限空間を開く。正確には幸福のかたちの創造の無限空間を開く。資源は有限だが、情報は無限だからである。マテリーは有限だが、イデーは無限であるからである。

162ページ

~最も大きい射程をもつ発想がひらいてみせる可能性は、情報というコンセプトの第3の様相、効用としての情報の彼方の様相、美としての情報、直接にそれ自体としての歓びであるような非物質的なものの様相を含むコンセプトを要請し前提している。

 子どもは成長しなければならないけれども、成長したあとも成長が止まらないことは危険な微行であり、無限に成長しつづけることは奇形にほかならない。まして成長しつづけなければ生存しつづけられないという体質は、死に至る病というほかはない。

 成長したあとも成長し続けることが健康なのは、「非物質的」な諸次元、、、知性や感性や魂の深さのような次元だけである。~成長のあとの成長の可能性について、

164ページ

 ~情報の意味は一般に「みえないもの」、「みえにくいもの」を「みえるもの」として明確に経験させてくれるということにあるといえるし、現代の社会のシステムの「外部問題」との関わりでいえば、「目にみえる」幸福とひきかえに、「目にみえない」幸福を解体するメカニズムに目を開かせてくれることにあるともいえるが、この「目にみえないもの」は、空間的に遠い地域の人びとに転嫁されているゆえに目にみえないもの、時間的に幾年も幾世代ものちの帰結であるゆえに目にみえないものであるだけでなく、モノとして存在しないゆえに目にみえないもの、測定し、交換し、換算しえないゆえに目にみえないものであることがある。

 これらすべての目にみえないもの、見えにくいものに対する視力を獲得することが必要なのだけれども、それはこのように、測定し交換し換算しえないものへの視力、つまり「かけがいのないもの」についての視力を含まねばならないだろう。

 そしてこの「かけがえのないもの」という領域は、「情報」というコンセプトの可能性の核心にあるものでありながら、「情報」というコンセプトを越え出してしまうほかはないという、逆説的な出口を開いているように思われる。

■さらに10年後の現代、インターネットの気象衛星を核とした地球観測網を自宅で普段着で個人で見ている2006年9月18日(月)。台風13号についで、昨日南方海上で生まれたばかりの台風14号、その中心気圧が下がりつつ発達している。こうしたこれまで目にみえなかったものが見える時代にあっても、人間が取りうる対策は、原初的なものである。台風が来ることがわかっていながら、対応が早い人、何もしない人、、、、それは生産者だけではなく、仕入れ手配という感覚の麻痺(→結果高騰)、、、、、

日本国外の農業生産地から日本への農産物の移入という概念には、大規模貯蔵という科学的技術が横たわっている。そのことを、今年7月の北海道におけるかすみ草生産者の全国大会で、かすみ草の世界戦略の核心にいる中東の国のD社の社長は提言している。大会冊子に英文と邦訳で併記されている。これはすべての農業生産物(商品生産)にあてはまる。

 10番目の切り花貯蔵能力の向上(需要のピークにあわせるために品質を保持しながら大量貯蔵)こそが輸送距離自体を貯蔵時間におきかる、つまり価値を高めるための仕組みと見ていい。遠いことの価値、近いことの価値、、、それをきちんと考える時代になった。7月からずっとこのことを考えている。20060715img_0692

 かすみ草生産における最近の世界的な変化(大会資料より転載)

1. カスミソウ産地の移動は続いている
  a)気候的にカスミソウ生産に適した国
  b)エクアドル、ケニア、エチオピアのように人件費の安い国

2. 比較的小規模な家族経営主体の国での生産減少
   オランダ、イタリア、スペイン、日本、イスラエル

3. 小規模生産者(生産会社)の減少と15ha以上の大規模生産者(生産会社)の成長

4. 生産レベルや効率の飛躍的な向上と工業的生産への転換

5. 開花時期調節技術の進歩

6. 輸送コスト低減のための海上輸送の試み

7. ロジスティックスの画期的な改善
   採花の瞬間から選別、パッキングを経て小売店までの厳格なコールドチェインの適用

8. 異なる育種家による品種の多様化

9. 大規模生産者は新しいマーケットを模索

  ロシアマーケットは急速に拡大し、価格も良。東欧諸国の消費の増化。エクアドル、
コロンビア、アフリカ生産者は日本に着目し既に輸出開始

10.切花貯蔵能力の向上
   需要のピークにあわせるために品質を保持しながら大量貯蔵

11.環境保護の観点から天然化合物での防除

12.市場外流通の増化

13.科学的手法による切花処理

14.土壌病害との戦い。汚染土壌での隔離栽培や新培土への転換

15.栽培工程の効率化
   単位面積あたりの効率追求による経済効率重視の経営

品種の変遷(除く日本)
  
 私が参加いたしました福島大会でも述べましたように、1997年以前はヨーロッパにおいてパーフェクタが95%を占めていました。1997年にダンジガー社がミリオンスターを発表し、
これが数年の内にマーケットに大きな変化をもたらしました。ミリオンスターならびにミリオンスター由来の小輪系品種が84.2%のマーケットシェアーを持つに至りました。実際、ミリオンスターはヨーロッパおよびアメリカマーケットの牽引車です。2005年にはオランダオークションで67.3%がミリオンスター、16.9%がミリオンスター由来品種、残り15.8%がその他品種でした。その他品種としてはパーフェクタが5.2%、ニューラブが1.6%、ニューホープが1.2%等となっています。

輸入切花に日本の生産者はどのように立ち向かうか

 一番重要なことは、起こりつつある変化を、たとえ辛くても、素直にそして現実のものとして認識することです。花の世界的な競争は、他の分野と同様に、日に日に激化しています。オランダ、スペインそしてイタリアの生産者は競争に敗れ、その栽培面積は毎年減少しています。一方、ヨーロッパマーケットに輸出しているトップあるいは主要なイスラエルの生産者は上手く立ち向かい生産量が増え、収入も増えています。その理由はこれまで蓄積した経験やノウハウを生かし、かつ、エクアドルやアフリカに比べて低い輸送コストを実現したことにあります。それでも、アフリカにはイスラエル人が経営するカスミソウ生産農園が既に3から4あります。

 ヨーロッパの生産者に比べ日本の生産者は以下に述べる理由により有利なポジションにあります。

1. 日本マーケットは国内生産品に慣れている。
2. 日本マーケットは、少なくともフラワーショップでは、高品質を求める。
3. エクアドルやアフリカでのカスミソウは露地栽培であり、日本の植物防疫所が求める虫が付いていない切花を生産するのは大変である。
4. 皆様がご存知の通り、中国のカスミソウ生産レベルは現時点では低い。

何を為すべきか?

1. 品質、品質、そして品質!

                

2. より効率的な生産。補光やジベレリン利用による生産期間の短縮

3. 世界の主要な産地で作付けされていない品種の栽培。海外産地の日本への参入を困難にする

4. 小規模生産を生かして新品種へすばやく取り組む。大規模生産では多品種の生産や品種のすばやい変更は難しい

5. 品種保護制度の強化とサポート

6. 可能な産地では規模拡大。通常、大規模化はコスト削減に役立つ

7. 改革とチャレンジ。適地栽培への転換20060922c20051103ffk01ecu

8. “Flower For Kids”へのサポート。需要拡大のために子供達に花の使い方を教育。我々全員の利益へと繋がる

9. 可能な限り機械化。圃場だけではなく切花調整室でも。―パート労務費低減で収益性の向上―

10.切花品質レベルの改良のため、新しい栽培技術に取り組む。例えば、マグネシウム
や亜鉛のような微量要素の散布、埋設型潅水システム、施肥の適正化、成長センサ

11.単位面積当たり収量増のための栽植密度試験

12.競合に打ち勝ち、ダイナミックに変化するための絶え間ない新品種試験

 保守的と言われるロシアでも品質の良さや、切花重量が評価され、パーフェクタからミリオンスター、ニューホープへの切り替えが起こりました。

  (日本語訳:住化農業資材(株)西川 晶) 

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