日本農業とドール
■前掲書『at』(あっと、2007年10月発刊、オルター・トレード・ジャパン編集、大田出版)9号に、関根佳恵「多国籍アグリビジネスの新たな経営戦略~グリーン・キャピタリズムを掲げるドール社」は重要な事実を教えている。
市民社会の要請に対応するかたちで多国籍企業による自主規制とそれに伴う認証活動が活発化したことと、その各国での課題のある現状が報告されている。筆者は認証ラベルの氾濫と錯綜という選択肢の多様化により、市民運動が拠り所としてきた多国籍アグリビジネスに対する対抗軸はぼやけてきたのではないか?としている。
日本国内におけるドール社の実態についてもインタビューをもとに掲載されている。一部を紹介する。なお花き事業もドール社は世界的に行っている。
■1991年に合弁会社(株)フレッシュシステムFSを設立。2007年現在全国20カ所に事業センターを展開し、バナナの追熟加工、野菜や果物のカット加工および青果物の再放送業務を行っている。
1998年に青果物の卸売業を行う(株)ケーアイ・フレッシュアクセスKIFAを設立。全国11カ所にあるコールドチェーン完備したセンターと生産から販売にいたる情報共有システムにより、商品代引サービスや小売店に対する商品販売計画の提案も行っており、全国のスーパーの8割近くと直接取引をしている。これらは卸売市場流通との競合関係にあるだけでなく、対事業者サービスの顧客として卸売・仲卸業者との取引も視野に入れている。
KIFAの事業サポートのために、(株)イー・サポートリンクが生鮮食品流通の情報処理を担う会社として設立されている。
これらのサプライチェーン・マネジメントで小売店との強いつながりを築き、国内のバナナ市場における最大のシェアを獲得している。またコールドチェーンと情報管理システムによりロス率と予約販売をかなり正確に管理できるようになった。
■ドール・ジャパンの日本農業参入は、1998年に1500戸の日本国内の農家と野菜や果実の契約栽培に着手したが、2年で中止。2000年から、農業生産法人(ファーム)を全国各地で組織化し、2005年までに北海道から九州まで8社のファームを立ち上げ、ブロッコリーのリレー出荷をしている。
ドール・ジャパンは、業務提携先の卸売業者の(株)北海道産直センターの社員の出資で、ファームを設立。そのファームの農産物は全量買取契約。さらにドール・ジャパンは融資会社(株)アグリ・プロデュースを設立しファームに融資。ファームは産直センターによる技術指導に対しロイヤリティを支払っている。産直センターはファームの立地や農地集積に関する自治体や農業委員会、地域の農業関係者との交渉の役割を果たし、4社が一体となって国産野菜事業を組織している。生産されたブロッコリーにはトレーサビリティと減農薬栽培を謳った「I LOVE」というブランド名をつけ高価格帯で販売している。このブロッコリーの販売先は主に全国の生活協同組合(※)である。
※ドール・ジャパンが国産野菜を販売している生協は、首都圏コープ、都民コープ、ユーコープ、コープこうべ、コープ北陸、京都生協、コープ九州事業連合のほか、北海道、宮城県、山形県、広島県、香川県等。
■ドール・ジャパンは、国産事業に参入することで、輸入青果物しか扱っていなかった時代には決してアクセスすることができなかった市場を新たに開拓。リレー出荷戦略は国産ブロッコリーが品薄になる時期の出荷を実現しており、これが生協等への販売交渉を有利に進める鍵となっている。また既存ブロッコリー産地の農協からの買い付けもはじめている。
■北海道と鹿児島でのドール系ファームの実例を掲載している。
(有)I LOVEファーム日胆は、当初北海道の厚真町に立地していたが、町が認定農家をするために1年間の観察期間が必要としたため、隣接する鵡川町に事務所を移転し、そこで事業初年度から認定農家となった。(低利融資と農地集積を受けられる)
このファームは、2004年時点で経営面積240ヘクタール、社員10名、パート労働者250名。2005年は工業用地として荒廃していた道有地の一部を利用し323ヘクタールに拡大。
■2002年鹿児島県高尾野町で設立された(有)自然菜果いずみファームは、台風や鳥害と農地集積も難航したことから、2005年に閉鎖し、長崎県五島市に移転登記し、10ヘクタールの農地でブロッコリー栽培を行うとともに、同市の農家とブロッコリーの契約栽培をしている。
