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2013年12月 7日 (土)

暮らしを支えた道具作り

  ■■朝日新聞特派記者団『グアムに生きた28年 横井庄一さんの記録』(1972年、昭和47年2月25日第1刷)


 横井庄一さんは愛知県海部郡佐織村で生まれた。母親の、つるさんは離婚して実家に戻る。家に織物の機械が一台あり、畑をたがやすと、休む間もなく糸を巻く。幼なじみだった人が語る。

「学校から帰ると、庄一は、みんなのように遊ばなかったよ。そう、道草なんかしなかった。まっすぐ家に帰って、糸巻きの手伝いをするんだ。日曜日、みんなが両親に連れられて遊びに行くのを、庄一さは見ていたはず。しかし母親にねだったりしないで、内職の手伝いをしていた」(89ページ)


 横井さんの穴ぐらからグアム警察本部に運ばれた生活用品の数々は、見るものをしてそう思わせるほど実に見事なものだ。なかでもいちばん目を見はらされるのは、三着の洋服である。発見されたときに身につけていた半袖、半ズボンのほかに、横井さんは二組の長袖、長ズボンの洋服を持っていた。(略)生活の知恵などというような、なまやさしい言葉ではいいあらわせない苦労を思い知らされる。横井さんにおいては、生活用品を作ること、そして使うことが、そのまま、生きるというただそれだけの目的に収縮されていたのだ。(137ページ)


 「恐怖」が彼の生きる支柱になったとは考えられない。おそらく、と私たちは話しあった。それは横井さんが身につけていたおどろくべき生活技術そのものだったのではなかろうか、と。
 グアム警察署本部で公開された彼の生活用具をみたときに、それをはっきりと実感できた。そこに並べられた道具類は、芸術品に近かった。
  横井さんはいっている。日中は作業をやり、夕暮れに食糧探しに出かけ、夜は穴のなかで眠った、と。二十数年間、まったく同じような状況のなかで、彼の生きようとする意思を支えたのは、おそらくその「日中の作業」だったのではあるまいか。汗と油で黒光りしている三着の洋服が、はっきりとそれを物語っているように思われた。いずれもパゴの木の内皮をたたいて繊維にし、針金か竹グシで編んだもので、一見、南京袋のように見えるが、手にとってよく見ると、ポケットはもとより、五つボタンのひとつひとつにお穴がたんねんにかがれており、ズボンのすその部分には、なんとコハゼが四つもしつらえてあるのだ。テーラー(洋服屋)だった横井さんが、このような洋服づくりをただひとつの生きがいにしていたであろうことは、十分に想像できるのである。
 洋服だけではない。水筒を半分に切って作ったフライパンやサラ、針金で見事につくりあげたネズミとり、竹を編んでこしらえたエビをとるためのウケ、ココナツの繊維でよりあげた縄、どれを取ってもそこに彼の生きようとする意思がにじみ出ていないものはない。これらの道具類は、彼の生理的な必需品であったとともに、精神的な必需品でもあった。その二重の意味で、この道具が彼をささえたのである。(200ページ)

■本書は、横井さんが帰還してすぐに書かれており、この2年後に横井さん自身が書いた手記と、内容はすこし異なっている。横井さんを支えたのは何だったのかと、新聞記者たちが話しあった内容が、本書には、かかれている。

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