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2013年12月 7日 (土)

繊維を水にさらす、撚りの具合、編む、織るの意味

■2013年12月7日(土)

 水が鍵概念として植物繊維の取り出し時に出てきます。宿根(多年)性のカラムシ(苧麻)の場合、2度、冷たい流水(清水)に植物や取り出した繊維を漬けるのか?あるいは一年生のアサの場合は、圃場より引き抜き、アサキリした後に乾燥します。この前後に熱湯にてゆでるような作業が後年、仕上げの技術として追加されてきます。そして植物繊維を取り出す前に、漬け場という水に3日間ほどつけ、引き上げ、その後、蒸らして(発酵)繊維を取りやすくします。いずれも白く晒すために、繊維に含まれる雑物をそぎ落とす(発酵等)ことができます。 また苧麻では、沖縄県の宮古島等での織り上がった布を細かく叩き上げる「砧(きぬた)うち」。柔軟性を出す、と言われています。
 また、歴史的に、編み物から織物への転換の意味も重要です。虫の付かないもの、カビの生えないものにする工夫があり、繊維が結果として長い間、生かされます。


 植物繊維と水への疑問、編みと織りの問題へ、そのひとつの回答は、横井庄一『明日への道』(文藝春秋、1974年)のなかの南島での山での体験に、ありました。
 横井さんは島内に自生しているパゴ(ハイビスカス、paguとも)の木の繊維を取りだしています。

①パゴの木の皮をすうっ、すうっと頭の方から下の方へむかってはぐと綺麗にむけるので、夜の月あかりで一枚一枚はがして、明け方、川の水につけてぬるぬるを洗い、そしてそれを乾燥させ、それで被覆の修理をすることにしました。(152ページ)

②木の枝に吊しておいた私の持ち物は、スコール(雨)のせいか夜露のせいか湿気を通してしまっていて、主として着替えの衣類は全部腐ってしまいました。志知の袋はズック、中畠のはゴムの袋でしたから異常がなく、パゴ(繊維)の(手製の)網袋に包んでいた私だけが着替えを失い、ぼろぼろになった一張羅の衣類のつぎはぎの必要に迫られることになってしまったわけです。いくら昔、洋服の仕立屋でも材料がなくてはお手上げです。(154ページ)

③そこで一番最初に考えたのは、飛行場でモッコ(土運びのための)を作った要領でパゴの繊維をなって(綯う)、目の粗い布を編むことでした。竹で編み棒を作り、編み物ぐらいは見よう見真似で知っていましたから、素早く作って着用してみると、パゴは毛糸と違って伸び縮みがきかないので、体が締めつけられ肩がこって、とても使用できません。(155ページ)

④次に、魚取りの網みたいにしてできるだけ網の目を細かに作って着てみました。これは恰好はちょうど昔の身軽な忍者のようですが、やはり、体が締め付けられて身動きがならず、だめでした。

⑤この網の編み方は、前に二瓶が拾って持ち歩いていたハンモックを、いつだったかほどいて紐に使ったことがあり、そのほどいた時の記憶を逆に応用したのでした。

⑥あれこれ失敗した後は、いよいよ必要に迫られて本格的な布作りを考えはじめました。子供の頃、家に足ぶみのハタ織り道具があり(髙機と思われる)、母親が夜なべに、カタンコロン、カタンコロン、シュッシュッシュ(横糸のヒを通す音)と布地を織っていた薄らとした記憶から、足ぶみ機などとても考えつきませんが、一応道理は分かっていたので、まず幅二十センチ、丈三十センチほどの四角な枠組みをくみ、パゴの皮をめくると現れる白い繊維、これはいくらでも薄くむけるのですが、それを虫くいのある表皮に近い部分は除いて、きれいなところのみを何枚にもむいて適当な幅に切り、さらに糸をなって、枠の上から下へ、つまり縦糸としての張りつめ、一方では横糸を縦糸の一本置きに上手に通してゆけるようなあぐりをこしらえました。そして横糸を通すごとに竹べらで手元へキュッキュッと引きよせます。引き寄せるのに相当力を入れなければならないので、木枠の先の方は木の幹に押しつけ、一方は自分の腹で押すようにして両方から支えます。
 しかし、その間に、枠がゆがんだり、一応切り込みをつけてさらに釘打ちして四隅を留めてみても、いざ作業を始めるとキキッキキッと高い音をたてるので、敵に気づかれはしないかと心配で、今度は気が散って仕方ありません。そういう失敗をいろいろなめたあと、木枠の四隅をさらにロープできつく縛ってみるとゆがみも音もなくなり、ようやくほっとしました。

⑦糸づくりも初めの頃は、生木からはいだ薄皮ですぐに糸に撚りましたが、それだとアクがあるとみえて、着てから汗をかくと糊みたいになって、体にべたべた貼りついてきます。 そこで次に、はいだ一枚一枚の薄皮を二日間も水にさらしてアク抜きしてみました。しかしそれでこしらえても、やはりまだアクが出て、雨にでも遭うと体がぬるぬるするし、それに、やはりアクのせいかすぐに目が粗くなって穴があきやすくて困りました。でも当時は、当座しのぎだと思って、始終つぎはぎして間に合わせていました。(156ページ)

⑦それから十年も経ってからですが、糸を撚(よ)るのに普通の糸のようにしっかり撚ると、かえってまずいことに気づき、繊維を大まかに、よりを加えるようにした糸で織っていくと、それまでの難点が解消するのを発見し、以後は枠をもう少し大きなものにし、本格的な繊維生産に入っていくことができました。
 軍隊から支給された服は二、三年しか保ちませんから、我々は衣服には本当に苦労しました。初めは衣類の修理材料に、毒ガマ(両生類のカエル)の皮をたき火の灰の中へ一週間位つけておき、それを天日で乾かして、上位やズボンの穴あてに使いました。
 どうにも修理の方法がなくなって、パゴの繊維で洋服作りをはじめたのは昭和二十五年頃からです。

⑧洋服作りを簡単に説明しておきますと、上衣一着作るのに大きな目のタオル程度の布が、表側に四枚、背中に二枚、両袖に二枚、襟が裏表で二枚、前に襟一枚、それに肩当てに一枚、合計十四、五枚を必要とし、一生懸命に根(こん)をつめて織れば一ヵ月位で作れます。しかし実際にはその間、食糧探しや炊事作業で時間を取りますので、仕上がるのには三ヵ月も四ヵ月もかかりました。
 パゴの木を切って繊維を作るのに一ヵ月位、それを織り上げて布にするのに三、四ヵ月、そしてそれを縫って洋服の上下に仕立て上げるのに一ヵ月と、大変な苦労の連続でしたが、一面、物を作って仕上げるという充実した喜びが味わえました。(157ページ)

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横井さんが仕立てた衣類と、機織り道具
 
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