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2014年5月 4日 (日)

会津青苧への道(6)良い青苧繊維とは?

会津青苧への道(6)優れた青苧繊維とは何か?


1.『十日町市 郷土資料双書 八 越後縮の生産をめぐる生活誌』(十日町市史編さん委員会)
 
 1998年に発刊された本書は、多田滋 十日町市史編さん委員会織物史部会執筆員により行われた詳細で広範な聞き取り調査をまとめたものです。新潟県内のほか、昭和村大芦も調査地に含まれており、地元に暮らす私たちでさえ聞き得ないことまで引き出しています。調査者の能力に調査結果は左右されます。
 以下に紹介しますが、()で適宜注記補佐します。苧(そ)とは、植物からむしから繊維を取りだしたもののことです。

28ページから「羽州苧(うしゅうそ)と会津苧(あいづそ)の流通」で、

 越後の地苧(じそ・新潟県内で栽培生産されたカラムシ・青苧)は姿を消してゆき、細く績めて薄くは織れるものの、一面高価な、羽州苧と会津苧の全盛時代が続く。(十日町)市域で用いられていた苧の出所についての明治四年の記録には、「九分通 奥羽両国より買入来」ている、と説明されている。商品として名のある布を量産したわけでもない出羽において、早くから高品質の苧の大量生産が達成され、近江上布や奈良晒の原料にも多用されて越後の地苧を駆逐するに至った歴史的経緯は、詳細には判明していない。最後発の会津苧の躍進については、あるいは先の佐瀬与次右衛門の著書(『会津農書』)の功績が大きいのかも知れない。 
 
 時代が下ってからの最上苧・米沢苧・会津苧は、それぞれの産地や等級によって細かく呼び分けられ、価格差を生じていた。たとえば最上苧の中では、西村山郡の大江町域に産した七軒苧や、同郡の朝日町域に産した五百川苧(いおがわそ)が良質をもって聞こえていたし、御誂稀天(おあつらえまれてん)・稀・無類・大極というのが、商人の呼び名による最上苧の等級名であった。

 米沢苧の中では、大塚(現・長井市)、屋代(高畠町)産が最優品、小松(川西町)産が上品、赤湯(南陽市)・荒砥(白鷹町)産が中品とされていた。米沢苧を上・中・下に分けての現地取引の価格は、明治三十年の例で、一駄(三十七貫二百匁)がそれぞれ百七十五円・百十円・七十七円であった。

 会津苧というのは、実は新潟県側からの呼称なのであるが、その中でも最優品とされる大芦の産は大芦苧と呼ばれ、さらに、薄く短い順に並べて ワダクスソ(私苧)・チューソ(中苧)・カゲソ(影苧)・オヤソ(親苧)に細分されていた。ワダクスソは丈が一番短く、三尺くらいのものまで含まれていた。績む手間は当然余計に掛かるが、精製のよいものには極上品の評価が与えられ、高値に売れていた。生産量は何ほどのものでもなく、むしろ特殊な製品であった。
 チューソの丈は四尺五寸~六寸、本来ならば次のカゲソに扱うカラムシの中から、細く短いものを選り分けて精製した場合の呼称で、一般的な大芦苧の中の最優品をなしていた。ただし、チューソを選び出すと残りのカゲソの品質ががた落ちになるため、あまり生産されなかった。カゲソとオヤソは、カラムシの太さを目分量で区分して精製するもので、丈はそれぞれ四尺八寸と五尺二寸に決まっていた。
 

 現在の会津苧は、この二つに限られている。また夏の土用に入ったばかりのころに収穫された苧(からむし)は、特に軽量で上等な品になり、センソ(先苧)と呼ばれたものである。
 なお、先のワダクスソは、新潟県へ移入されてくるとカブラソと名が変わった。もっとも、これは新潟県東頸城郡の松代・松之山両町域での呼び名である。

 最後発産地の会津苧が飛び抜けた高品質に到達し、すでに文化年間には「格別の上縮」に用いるに至っていた(『小千谷市史 上巻』)のは、今もわれわれが眼前にするように、細心の注意を傾けてのカラムシの栽培法と、錬磨を重ねたその精製技術の非凡さによるものであろう。

(略)

 新潟県へ移入されてきた羽州苧や会津苧は、品質が優れ、下記のように好評を博していた。浦佐(現・新潟県大和町)の店で買ってきた最上苧や会津苧は、地苧(新潟県内の苧、自ら栽培した苧)に比べると、丈が長く色は白く「やはりバドコ(本場)の苧は違う」と、績み手はだれもが感心していた。績んでも、はかのいく、上等な苧であった(新水)。
 ムラまで売りに来たアイソ(会津苧)は、シリもカシラもない(ほとんど幅の均一な)、何から穫ったかと思うようなよい苧であった。もっとも、裂いていっても途中で引っかかるシナソという安物も、商人は一緒に持ってきた(稲子平)。上等の会津苧は、地苧とな天と地ほども品質が違い、丈が長く、透き通るように薄くて、極細に裂くことができた(鉢)。

 産地名にはこだわらぬ「良い苧とは?」という筆者の問いに対しては、次のような答えが得られた。
 色が白くてキラがあり、薄くて丈が長く、爪で裂いてゆけばスーッと最後まで真っすぐに裂けて、ヨコッツァケ(横裂け)のしない苧のことだ(慶地)。このヨコッツァケがして短く切れてしまった分は、細く裂き過ぎた分はクッツナゴクたびに出る微量のオクスナベリともども、屑(くず)になる。下手な績み手は、屑を沢山出すことになる。
 
 


2.「苧の道」(『会津学 第2号』会津学研究会編・奥会津書房刊、2006年)
 
 奥会津の昭和村佐倉のからむし工芸博物館の朝倉奈保子さんによる「苧(お)の道」でも、からむし(青苧)の品質について言及しています。257ページから。

 昭和村のからむしについて、聞き取り調査で尋ねた仲買のほどんどが大芦、ならびに川を隔てて大芦側の両原集落のものが良質だと答えている。多少の差はあるが、小中津川、佐倉、喰丸、小野川、大岐がそれに順ずる。
 殊に大芦のキラは他のどの集落にも勝るという。
 明治17年10月に五十嵐伊之重が記した『大日本農会報告 第四拾号』にある明治16年度のからむしの集産額価格表を見ても、大芦のからむしの価格が最高となっている。越後側では、会津産のからむしを会津苧と呼んでいたが、その中でも最優品とされる大芦の産は大芦苧と呼んでいた。別の呼び名で扱われていたところからも、大芦産のからむしの品質の高さがうかがえる。
 
 昭和村以外では、南会津郡只見町の布沢のからむしが高値で売られている。実際、昭和村中向の斎藤清佐エ門家では2代にわたって布沢のからむしは大芦並だと高く評価し大量に購入していた。吉尾の手前の「まぎ」という沢付近のからむしも高品質だったという。

 良いからむしの条件というのは、光沢(キラ)があるかないか、そしてキズがあるかないか、ふわふわしているかどうか、尻が軽くないか、である。
 キズがあってもふわふわしていれば良質と判定される。反対にキズがなくてもふわふわと軽くないものは良くない。
 鑑定の仕方としては、頭の方を持ち、少し持ち上げてよく見る。軽く振りながら全体を見る。頭を持って少し握るだけで、からむしの硬さ、柔らかさ、引き方の腕がわかった。振ってみれば音でわかるという。
 また、100匁のまとめ方にもコツがあった。以前は朝から晩まで盤を離れず上げ膳、据え膳をしてもらい、一日中引き続けた(女性)。
 一日で100匁引く人を「ガサを引く人」というが、以前はこのような人が現在よりも多く、一日に引いたもので100匁をまとめることができた。何日もかけて引いたものでまとめたり、また違う人が引いたものを混ぜて束ねるのは望ましくなかった。
 以前は短尺(タンシャク)や私苧(ワタクシ)を本苧(ホンソ)に混ぜ込んだので、現在の100匁よりもかさがあり、質も良かったという。

 質の良いからむしは、葉が小さめで、葉の緑もあまり濃すぎず、茎も太すぎず少し赤みを帯びた繊細に見えるものがよいという。根は太く、出ている芽の間隔が狭いもの、そしてその芽がぶつぶつしていて大きいものが良い。

(2014年5月4日記 菅家博昭)

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天、、、による麻の評価。近世 白沢村 羽染宗六麻仕切書(大宅宗吉氏蔵)

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■山形県立博物館研究報告第14号には菊地和博「青苧の生活文化史」1993
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良質青苧生産地(羽州青苧) 最上苧・米沢苧
 
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