« 金山町沼沢を行く | トップページ | 箕輪 諒 『殿さま狸』 »

2015年4月17日 (金)

ユキノケするまで、手をかける(柳津町銀山川流域)

■2015年4月17日(金) 雨


 本日も朝から、金山町太郎布・沼沢地区の古老を訪ねる。
 
 19日(日)の夜は会津若松市内で、喫茶店ラマの店主佐藤衆さんらと会食の予定。
 

■ この2月28日に柳津町の銀山川流域の集落を訪問しました。もちろん行った事のない民家を5軒ほど訪問し、玄関先で「昔の話は知らない」と、拒絶されます。これが普通の対応です。そうした場合に、「どなたか知っているお年寄りの人はいませんか?」とうかがいます。でも何も話を聞けずに一日が過ぎていきます。
 
 「最近、病院に入院された」「老人ホームへ行かれた」「県外の子どもの家に引っ越しされた」というのが多くなっています。昨日訪問した金山町の集落でも同じように、地域のことを語れる(今回は土地・沢・山などの呼び名を調べています)古老が少なくなっています。
 
 そして大きな民家、かやぶき屋根にトタンを葺いた形式のいわゆる築数百年経過している大きな古民家の空き家もたいへんお多くなっています。奥会津各地で、一集落内の2~3割は空き家となっており、その付帯土蔵や小屋などの雪による倒壊もこの冬には多く見られました。
 
 家屋や土蔵の解体には最低300万円以上の経費がかかります。
 
 
■ 先日、柳津町の銀山川流域の集落を再訪し、1軒目に訪ねたお宅で、「あそこの家なら89歳のじいちゃんがいて、まだ元気なので、なにか知っていることを話せると思う」というので、通算7軒目となる家を訪問しました。
 
 高台にある家の玄関でおばあさんが、コタツに入れる練炭の入れ替えをしていました。用件を伝えると室内におばあさんが声をかけられ、おじいさんが玄関まで来られ、「昔のここの土地での暮らしなどを教えていただけないか?」と伝えます。一考され、「役に立つかどうかはわからないが、どうぞ、家の中に」と。

 ご主人は、大正15年生まれ89歳。奥様は昭和4年生まれ85歳の二人暮らし。戦後の昭和25年頃に結婚され、すでに3人の子は独立し、孫も。

 地域の暮らしや、生業をうかがいながら、気になった「言葉」を、最後にまとめて再びうかがう。
 
 時に祖先が植えたキリ(桐)の木を売ることで暮らしを助けられてきていて、このご夫婦の場合には2度そうしたことがあった。昭和30年頃の父の病気で、キリの木を売って入院費用を賄った。そして夫婦で新しくキリを植えて、子どもが結婚するときにそのキリの木を切って売った。
 その後、定年となるような年代からは畑や田の土手に、クリの木とケヤキの木を植えた。スギの木ではない選択をされている。この半年に訪問した奥会津の他所では、「スギの木を植えて失敗した」と語る古老が多い。販売しても無価値に近いためだ。

 植えた木の手入れをうかがっていると、「ユキノケするまでは、手をかける」と語られる。木の背丈が積雪深よりも伸びて、雪上に木の梢が出るようになると、一人で生きていける、という意味。たぶん「雪抜け」という意味であろうと思い、その意味を詳しく聞いた。

 奥会津地域では、一般的表現として「雪負け」という言葉がある。木を植えても雪に押されて育たないこと、等を意味する。


 特にケヤキについては苗を植えるという行為を、「ケヤキの子を採ってきて植える」という表現をされる。ケヤキ樹下に、その種子が落下し、自然発芽したもの(苗)を採り植えている。「木はひとつき(一月)にいっぺん(一回)見て回る」のだそうだ。毎日行っても変化がわからない。ひとつきだと枝振りの補正や、いろいろわかるのだそうだ。

 アサについても話をうかがうと、戦前の早い時期に栽培を止めている(だいたいの地域は養蚕に転換している)。しかし、「アサは、土地のよいところに植える」ということを伝え聞かれていた。アサを作らなくなると、イナワラに樹皮を混ぜて綯(な)ったりしてロープなどを作ったが、アサの強度にはかなわないと語る。
 
 
 野菜など買った方が安いけれど、そして「手間にはあわね(合わない、非効率)」けれども、自分で食べるものは自分たちで畑で作っている。小さな粒のナットウマメも作り、選別(コーヒーのようにピッキング)し、納豆も食べる分を作っておられた。

■そういえば、先日の我が家でも父・清一は「わがい(我が家)で作れるモノ、、、、買ってらんにぇべ(買わない)」このときはダイコンの話、、、かすみ草を定植したハウスの畝の空間地にダイコンの種を蒔くかどうかの議論のとき、ダイコンの種を蒔くという主張をされた。

 三島町大石田の渡部和さん、福島民報サロン(新聞)に連載をされていますが、数年前から奥会津書房の遠藤由美子さんらと「古老に学ぶ暮らしの知恵~アルガナデマニャセル暮らしの豊かさ」という表現を取り上げています。

 「買わずに」「身のまわりに、今、あるもので、間に合わせる」という新しいライフスタイルの提案は、かつての奥会津の暮らしそのものでした。
 
20150415dsc02888

 
20150415dsc02891
ナットウマメ

自家採取をして蒔くを繰り返す。何年も繰り返す。
そのうちムラサキ色のマメが出てくるのだそうだ。
そうすると新しいマメの種を買って蒔く。
 

 20150415dsc02894
 
 

 
■ 会津藩が1809年(文化6年)に完成させた『新編会津風土記』。会津若松市門田町の歴史春秋出版社刊(2002年)の5巻本のなかの4巻の285ページから巻之九十三 陸奥国河沼郡 牛沢組 に柳津村など銀山川流域の村が記載されています。

 
 297ページの塩野村は、先日融雪土砂崩れが発生し通行止めとなっているところですが、ここに「銀山川」が記載されています。
 
 銀山川(ぎんざんがわ)

 村東ニアリ、軽井沢村ノ銀山ヨリ出ル故此名アリ、北ニ流ルルコト三町猪鼻村ノ境ニ入ル、広四間計、金気アル故ニヤ魚類ヲ産セス


 これは「金気(かなけ)があるから魚類が生息しない」ということを行っており、最上流の会津藩営の軽井沢銀山の鉱毒汚染によることを言っています。
 そのためこの銀山川が只見川に合流する場所での魚の捕獲は禁じられています。これは虚空蔵様のおられる場所であり、魚群豊かな魚淵(うおぶち)といい、それは「虚空蔵様の使いの魚だから採らない、食べない」ことで人々の行為を制限(禁忌)とし、魚摂取による鉱毒汚染を予防したものと考えられます。

 『新編会津風土記(4)』287ページでは、魚淵 只見川ノ東岸ニアリ、此地昔ヨリ漁猟ヲ禁スルニヨリ魚多ク此淵ニ集ル、、、、
 ここに、蒲生家による「毒流し」の記述もみられます。これも軽井沢銀山経営が藩営・藩主との関連と考えられることを寓話化したものと思われます。その罰が慶長大地震で虚空蔵堂が破壊される、、、ということで説明をしています。


 
 291ページの阿久津(アクツ)村。此村旧悪津ニ作ル、寛文中今ノ字ニ改ム、、、、金谷(カナヤ)川 村南四町ニアル渓流ナリ、昔山賊ココニ出テ往来ヲナヤマシ、奪取シ金銀ヲ此水ニテ洗シユエ金洗沢トモ名クト云、長倉村ノ山中ヨリ出テ西北ニ流ルルコト五町余、只見川ニ入ル

 金属の精錬の金洗水の汚染を背景とし、その場所が悪津と思われる。

 いずれも虚空蔵と、金属(鉱山)開発との関連がよく見えます。

 奥会津の巨岩・磐座の場合、山中の場合は天狗岩となり、河川沿いの場合は虚空蔵岩というような呼称と、それにまつわる地名譚を抱えることが多いようです。いずれ修験が関与したものでしょう。
 

 
20150417ginzan
 
 
 
 


« 金山町沼沢を行く | トップページ | 箕輪 諒 『殿さま狸』 »

会津学」カテゴリの記事

September 2020
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      

KANKE/リンク

かすみ草写真集1

  • 20061010img_3904
    348枚。菅家博昭撮影。かすみ草生産地での撮影。

奥会津の風景01

  • 20060801img_4064
    387枚、菅家博昭撮影。おもに昭和村など。

2006欧州視察

  • 20061101dsc00245
    2006年11月 JELFA欧州視察の個人写真記録。菅家博昭撮影。

2010年1月

  • 20100131dsc00811
    2010年1月25日~27日、熊本県

2010年02月 かすみ草栽培

  • 20100212dsc00221_2
    2010年2月12日 かすみ草ファンタイムの砂あげ苗のポット仮植作業。撮影菅家博昭。

2006年夏の記憶

  • 20060913img_9418
    2006年の奥会津・昭和村、カスミソウ栽培の風景。菅家博昭撮影。

2006年秋の記憶

  • 20061114img_1169
    2006年秋の福島県奥会津の風景、カスミソウ栽培の様子など。菅家博昭撮影。

2006年12月冬の沖縄

  • 20061203img_3812
    2006年12月の沖縄県内。花の生産地や街の様子。菅家博昭撮影。

2007年1月から

  • 20070401img_9892
    2007年1月から奥会津などの風景、菅家博昭撮影。

2006北海道かすみ草サミット写真誌

  • 20060715img_0143
    2006年7月13日、14日。北海道夕張郡由仁町で開催された第4回全国カスミソウ北海道サミットinみなみそらち・ゆに

2007静岡カスミサミット東京

  • 20070201img_9619
    2007年2月1日に東京都内・大田市場で開催。

2007年4月から

  • 20070426img_5713
    2007年4月から、奥会津の風景、かすみ草生産作業風景など、菅家博昭撮影。

2007年5月の風景

  • 20070520img_0193
    2007年5月の奥会津の風景、かすみ草生産。菅家博昭撮影。

IFEX2007_TOKYO_01

  • 20071011ifexdsc02602
    144枚、菅家博昭撮影。幕張メッセ花の展示会。

2007年11月

  • 20071108dsc04006
    2007年10月オランダ、アムステルダムのホルティフェア、アールスメールマーケットでの印刷物資料

2015 からむしフェア

  • 201507_19img_6580
    2015-07-18,19福島県’奥会津’昭和村で開催された第30回からむし織りの里フェアより。昭和村佐倉(からむしフェア)、喰丸小学校(新作記録映画 春よこい)大芦(からむし畑見学・からむし剥ぎ、からむし挽き。保存協会)地内。菅家博昭撮影。76枚掲載(372枚撮影)。キャノンEOS、ソニーTX。
無料ブログはココログ