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12 収穫物の公開

< 収穫物の公開 >

 森林の利用でも奥山は猟ぐらいの利用であり、集落のまわりに畑、水田、草地である萱場(茅場、カヤバ)を同心円状かモザイク入れ子状配置し、その周囲を春木山に利用する燃料の薪や炭を焼くコナラ主体の二次林が取り囲む。それ以外は手を付けないが、森の中から生産される山菜、茸、鳥獣、魚貝類はきまりを定めて利用している。
 家を中心とした場合、労働の手段である大地=田畑が近くに有り、人々の目にはそれがよく見える仕組みとなっている。しかし労働の対象そのものとなる森=自然は少し離れ、人間の森の中での動きは見えない。土地の統制よりも人々の山に入る行動、山での採集の仕方そのものの統制が重要であった。その古い時代から現在も、村人は誰が何処に今いるか、無意識のうちに注視しているのは、そのような意味からだろう。
 たとえば、急病人がでたときなどは、村人はその家族が山菜採りにいっている山を本人に聞かなくとも知っていて山に入り連れてこれる。また、山菜茸木の実は家の前にムシロを敷いて並べ乾燥する場合が多いため、収穫量も公開して明らかにしていることになる。朝の山に入るルートを見かけ、帰りの背負った篭の数、広げたムシロの枚数で量はわかり、急に葬儀が出来て吸物に茸が必要だったり、あえ物に山菜の塩漬けが必要だったりしたときは、この記憶をたよりに、その品物を持っている家から借りてくるのは今でも同じである。または、贈与を受けた場合は必ず対価の品物であとでお返しをする。
山のものは、名前がつき食べられても利用しないものも多い。自然資源の種類をくまなく利用するのは薬としてのときだけで、その量はごく少量である。動物にしても、毛皮が売れる時代にはバンドリやムジナ、テンを捕っていたが、利用するものを利用するだけ捕るのが基本である。また、集団で狩を行うことは狩の効率を上げるためであるが、それは動物数のたくさんいる斜面で行われ、結果としてすべての地区から獣を捕るといったことを防ぎ資源保護に結びついていた。
 さて、イヌワシやクマタカの餌でもある兎の話をこの後に紹介しよう。季節の変化、雪の形状と密接なので、まずは博士山の雪の話から。

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